講師紹介と講座内容

講座名:出雲の神話と考古学
講師名:佐古 和枝(さこ かずえ)(関西外国語大学教授)
※新規講座
◆講師自己紹介 関西外国語大学教授・NPO「むきばんだ応援団」副団長。鳥取県米子市出身。
同志社大学の森浩一教授のもとで考古学を学ぶ。1997年より、故郷でみつかったわが国最大級の弥生遺跡・妻木晩田遺跡の保存運動をおこなった。1999年に遺跡の保存が決定した後、「むきばんだ応援団」は妻木晩田遺跡の普及・活用に取り組み、毎月1回米子市で市民講座「むきばんだやよい塾」や植物観察「むきばんだを歩く会」を主宰。また、応援団事業としてWEBサイト「全国子ども考古学教室」を制作し、「kid’s考古学新聞コンクール」やオンライン交流会「kid’s考古学くらぶ」なども実施。
現在、文化庁文化審議会第一・第三専門調査会専門委員、長崎県文化財審議委員、山口県文化財審議委員、羽曳野市文化財審議委員などを務める。主な著書には『吉野ヶ里~蘇る弥生都市』(草思社)、『ようこそ考古学の世界へ』(中央公論新社)など。
◆講座の内容紹介・受講される皆様へ 出雲といえば神話の国、全国の神々が集まる神々のふるさと、などと言われます。それは、『古事記』・『日本書紀』の神話の半分以上が出雲の神々の話であり、出雲の大国主命は天孫降臨前の葦原中国の最高支配神という重要な位置づけであるからです。しかし、なぜ出雲の神が?と不思議に思う人は少なくないと思います。その疑問について、文献史学はなかなかうまく答えることができませんでした。
1984年、島根県出雲市(旧斐川町)の荒神谷遺跡で358本もの弥生時代の銅剣が埋納された状態で発見され、考古学界は驚愕しました。「もしかすると、弥生時代から出雲には独特の神まつりの世界があり、そのことが記紀神話に出雲の神々が重要な役割をもって登場することと何か関係があるのではないか」と思ったのは、私だけではないと思います。もちろん、神話を安易に考古学に結び付けて解釈することは慎まねばなりませんが、それでもなお、神話の中にも何らかの歴史的な事実が反映されている可能性までは否定しきれないと思います。山陰出身の考古学研究者として、とても気になるところであり、いろいろ考えてきたことを披瀝し、一緒に考えてみていただきたいと思います。
◆講座スケジュール
5回講座 金曜日 13:00~14:30 ※8月は休講月
第1回 4月11日(金)「出雲神話とは?」
内容:出雲の神々についての物語は、『古事記』・『日本書紀』(以下、記紀と略す)および『出雲国風土記』に書かれています。それらの史料について紹介し、そこに記載された「出雲神話」の概要を説明します。
第2回 5月9日(金)「弥生時代の“出雲的世界”」
内容:1984年に銅剣358本、翌年に銅矛16本と銅鐸6個が出土した荒神谷遺跡の拝見以後、山陰では重要な弥生時代の遺跡が次々とみつかり、山陰の弥生社会についての認識が大きく塗り替えられました。学界を驚愕させた出雲地方の大量の青銅器埋納を中心に、弥生時代の山陰の神マツリの世界をご紹介します。
第3回 6月13日(金)「出雲大社の謎~文献と考古学から」
内容:出雲大社の本殿は、平安時代には全国一の高層建築物として知られています。また、また、平面プランも、神社建築としては異例の正方形の建物です。いったい、なぜ出雲大社はこのような独特な建物なのか。この謎について、記紀・風土記の伝承と考古学の両面から推論してみましょう。
第4回 7月11日(金)「古墳時代の“出雲的世界”」
内容:全国的に古墳の規模が縮小する古墳時代後期に「県下最大規模」の古墳が造られるのが奈良県と島根県。しかも、島根県最大の古墳は前方後円墳ではなく、前方後方墳です。「墓は四角いものだ」という弥生時代の伝統を最後まで貫くのです。古墳時代の出雲国のこだわりについてお話します。
第5回 9月12日(金)「玉からひも解く不思議の国出雲」
内容:弥生時代から古墳時代まで、古代出雲は、神マツリや葬送儀礼で独自の世界を築いていました。さらに古墳時代から奈良・平安時代にかけて、出雲が不動の存在感をもつのは「玉」です。なぜ神話のなかで出雲が特別な位置づけをされたのかについて、出雲の「玉」に注目して、謎解きをしてみたいと思います。