公益財団法人古代学協会

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講師紹介と講座内容

講座名:縄文時代の考古学

講師名:矢野健一(立命館大学特別任用教授)

※新規講座 ※定員につき受付終了

◆講師自己紹介

立命館大学特別任用教授。山口県出身。
縄文時代の考古学を専門として研究しています。学生時代には、全国各地の遺跡の発掘に参加しました。西日本の縄文時代の研究を中心に、土器、石器、集落、人口など、研究を続けてきました。大学教員になってからは、滋賀県の伊吹山のふもとにある縄文時代終末期の杉沢遺跡で、学生といっしょに発掘を続けてきました。2010年から水中ロボットを利用して琵琶湖底の葛籠尾崎湖底遺跡の調査を実施しており、水深30-80mの湖底で、縄文土器を含む多数の土器の画像を取得してきました。ただし、趣味は潜水ではなく、山歩きです。
自著は『土器編年にみる西日本の縄文時代』、小杉康・谷口康浩・西田泰民・水ノ江和同との共同編著『縄文時代の考古学』(全13巻)があります。

◆講座の内容紹介・受講される皆様へ

縄文時代というと、やはり、土器をイメージします。確かに、縄文土器は世界的に見ても、非常に変わった特徴をもっています。通常の土器は、土器の縁が水平ですが、縄文土器の縁は「波状口縁」と呼ばれる波打つ口縁や火炎土器のように突起が多用されます。波状口縁や突起は実用として土器を使うには邪魔なものです。縄文土器は、実用性を犠牲にして、装飾を優先したものが多いのです。これは、縄文文化に土偶や石棒など、祭祀用具が非常に多いことと対応しています。土偶などの祭祀用具は世界中に似たものは存在しますが、縄文時代の土偶などの祭祀用具は、世界的に見ても、その数や種類が異常に多いのです。
今回の講座では、このような「呪術的」とも呼ばれる縄文文化の特徴、およびその意味について、私なりの見解をお話したいと思います。また、1万年以上続いた縄文時代にも、歴史があり、縄文時代の初期と終末では、かなり、変化があります。その変化は、一言で言えば、弥生時代に近づいているということです。ただし、その変化は非常にゆるやかな変化なので、縄文人自身が意識的に変化を促進させたとは言いがたいものです。おそらく、今までの暮らしを続けようと努力した結果、社会が変化していったのだろうと思います。




◆講座スケジュール

5回講座 水曜日 13:00~14:30 ※12月は休講月です。

第1回 10月15日(水)
内容: 縄文時代の研究の歴史
縄文時代の研究が本格的に始まったのは明治以降ですが、縄文土器や石器の存在は古くからしられていました。そのことも含めて、研究の歴史についてお話しします。

第2回 11月19日(水)
内容: 縄文土器
縄文土器の時代の決め方や、縄文土器の地域色についてお話しします。弥生土器との相違と共通点についてもお話しします。

第3回 1月21日(水)
内容: 土偶と石棒
縄文時代の土偶の種類や特徴、石棒など、呪術的な道具である石製品の種類や特徴について、お話しします。

第4回 2月18日(水)
内容: 縄文農耕と人口推移
縄文時代に簡単な植物栽培が行われていたのは確実です。ただし、その程度については、議論があります。農耕社会は人口が増加しますが、縄文時代の人口増加には限界があります。この点も弥生時代以降とは全く異なります。

第5回 3月18日(水)
内容: 縄文集落と墓
縄文時代の集落は墓を中心として形成される場合が目立ちます。集落と墓との関係について、弥生時代以降の変化もふまえて、お話しします。