研究活動 ―共同研究

「近畿地方初期農耕集落の研究」


 
 標記の研究テーマで、平成24年度(2012)より新しい共同研究がスタートした。
平成9年、当協会は京都府長岡京市雲ノ宮遺跡の発掘調査を行った。主たる発見は弥生前期(環濠)、弥生後期から古墳時代前期、長岡京期の3時期にわたるものであった。発掘調査終了直後から出土遺物の水洗、記番、実測、写真撮影などの報告書の準備に取りかかった。翌平成10年9月には、第6回京都府埋蔵文化財研究会で、調査概要を発表した。しかし、その後、諸般の事情により、作業は中断のまま今日に至っている。
こうした経過をふまえ、新生(財)古代学協会では最優先の事業課題として、学史上古くから山城最古の弥生時代遺跡として知られる当遺跡の報告書の刊行を急ぐべく、平成24年5月より、遺物・遺構のトレースを中心に刊行準備作業を開始した。平成25年度の早い段階での刊行を目標に、これまで作業は順調に進捗している。
同時に報告書の長期の遅れを挽回する意味でも、遺跡の重要性という観点からも、同時並行的に共同研究を進めることとし(3年計画)、去る6月22日第1回目の会合を開き、今後の研究会の開催方法やテーマについての基礎的な検討を行った。
なお、共同研究員の構成は下記の通りである。
森岡秀人:座長 芦屋市教育委員会
桑原久男:天理大学教授
寺前直人:駒澤大学准教授
伊藤淳史:京都大学文化財総合研究センター
若林邦彦:同志社大学准教授
豆谷和之:奈良県田原本町教育委員会
國下多美樹:龍谷大学特任教授
上峯篤史:京都大学大学院文学研究科
山本 亮:京都大学大学院文学研究科
岩崎 誠:長岡京市教育委員会
桐山秀穂:野村美術館 オブザーバー参加(順不同 敬称略) 


第1回 平成24年6月22日
・共同研究発足の経緯説明
・共同研究メンバーの確認
・研究計画・研究費申請等

第2回 平成24年12月23日
・発表1 桐山秀穂(野村美術館)
 「雲宮遺跡の遺物・遺構の解説」
・発表2 寺前直人(駒澤大学)
 「雲宮遺跡石器について」

第3回 平成25年3月20日
・雲宮遺跡出土遺物の実見

 
今年度は初年度ということもあり、まず今後の研究の方向性を確認するとした。また、研究の軸となる雲宮遺跡の当協会調査の概要の把握に重点を置いている。共同研究を開始するにあたり集まっていただいた方々の中には、調査当時に遺跡と遺物をご覧になった方も少なからずいらしたが、何分年月を経ており、あらためて資料の把握から研究会を行うこととなった。
来年度以降は各研究者が多岐にわたる個別の研究分野を担当し、3〜4年内の成果の総合を目指す。共同研究の成果は、論文集の刊行やシンポジウムの開催といった形で一般への還元を目論んでいる。


▽ これまでの共同研究           

「仁明朝史の研究」



 古代学協会はこれまで、平安時代をテーマとした『桓武朝の諸問題』(1962年)、『摂関時代史の研究』(1965年)、『延喜天暦時代の研 究』(1969年)、『後期摂関時代史の研究』(1990年)、『後白河院―動乱期の天皇―』(1993年)といった論文集を編集・刊行した。それらはい ずれもが平安時代研究の最高水準の成果として高い評価を得、学界に裨益するところはまことに大なるものがあった。平成19年度(2007)より始まった共同研究「仁明朝史の研究」は、こうした事 業の続編として、平安時代前期の研究に楔を打ち込もうとするものである。
  仁明天皇(在位833〜858)の時代は、その主要な年号を採って「承和時代」とも呼ばれる。この時期には、平安京が安定するとともに、藤原良房の権力が 確立に向かい、「初期摂関政治」が姿を現していった。さらに、和歌、楽舞、仏教儀式などが新たな装いを見せ、「国風文化」への地均しが行われた時代でも あった。この共同研究では、平安時代を専攻する気鋭の研究者を集結し、後の王朝文化の先駆けをなす重要な転換の時代である仁明朝の歴史的意義を解明する。
  研究会は文献史学・考古学・美術史の各分野から、気鋭の研究者の参画を得て発足した。参加者は下記のとおりである。日本国内にとどまらず東アジア世界の動向とも関連付け、論点を深めていこうと企図している。

網 伸也:(財)京都市埋蔵文財研究所
佐藤泰弘:甲南大学教授
高橋照彦:大阪大学准教授
西本昌弘:関西大学教授
根立研介:京都大学教授
菱田哲郎:京都府立大学准教授
藤本孝一:龍谷大学客員教授
堀  裕:東北大学准教授
山内晋次:神戸女子大学准教授
山田邦和:同志社女子大学教授
山中 章:三重大学教授
吉川真司:京都大学教授
(50音順 敬称略)
  研究会は、共同研究の趣旨の確認と討論の方向性、主たる論点などに関して、参加者全員による意見交換をおこなった初回を皮切りに、平成19年10月以降、七次にわたってテーマ別研究会を実施し、平成21年8月の総括研究会をもって終了した。

  話者と話題は以下のとおりであった。


◇ 第1回
日時:平成19年10月10日
発表:参加者全員による座談会
話題:「仁明朝という時代とは日本 史上いかなる時代であったか」

◇ 第2回 
日時:平成20年1月20日
発表1 山田邦和   「仁明天皇陵をその関連陵墓」
発表2 山内晋次   「九世紀東アジアと日本遣唐使」 

◇ 第3回 
日時:平成20年3月20日
発表1 菱田哲郎   「地方寺院の終焉と定額寺修理」 
発表2 佐藤泰弘   「九世紀の交通形態」

◇ 第4回 
日時:平成20年6月7日
発表1 根立研介 「承和期頃の官営造仏組織とその後の展開についての試論」
発表2 西本昌弘 「平安京野寺(北野廃寺)の諸問題」

◇ 第5回 
日時:平成20年9月15日
発表1 高橋照彦 「土器・銭貨からみた仁明朝」
発表2 吉川真司 「九世紀の調庸制 」

◇ 第6回 
日時:平成21年1月31日
発表1 山中 章 「仁明朝前後の斎宮―史跡斎宮跡第U期遺構群の変遷を素材に―」
発表2 網 伸也 「軒瓦に刻まれた文字―造営官司から瓦屋へ― 」

◇ 第7回
日 時:平成21年3月29日
発 表1 藤本孝一 「続日本後紀の伝本概略」
発 表2 堀 裕 「仁明天皇と仏教」

◇ 総括研究会
日 時:平成21年8月2日
総括討論  司会:山田邦和

 足掛け5年にわたる研究会の成果は、角田文衞監修・(財)古代学學協會編『仁明朝史の研究 承和転換期とその周辺』(思文閣出版、平成23年2月28日)、定価7,000円(税別)として、このたび、めでたく上梓の運びとなりました。購読ご希望の会友(4月から会員に名称変更)の皆さまには、割引価格でご提供しますので、協会事務局までお問い合わせください。


 

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