角田文衞古代学奨励賞
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角田文衞古代学奨励賞 第1回受賞者
◇ 経  歴

氏 名 土口 史記 (つちぐち ふみのり)
生 年 1982年(三重県熊野市生) 京都市在住
学 歴 2009年京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了
    (東洋史学専修)。
職 業 2011年 日本学術振興会特別研究員(国立民族学博物館)


◇ 受賞論文
 先秦期における「郡」の形成とその契機 (第61巻第4号、2010年3月)


◇ 受賞理由
 現代の日本にも引き継がれている「郡」「県」といった行政単位は、秦代の「郡県制」を起源とする。戦国期の秦は、もともとその領域を「県」という行政単位に切り分けていたが、その後、県の上に「郡」を設置するようになる(現代日本とは上下関係が逆)。本論文は、この「郡」の形成過程について論じたものである。  出土資料(発掘等で発見された青銅器銘文や竹簡)による最近の研究成果では、「郡」が三晋(韓・魏・趙)諸国には見えず、秦にのみ出現するという地域差が明らかにされていた。土口氏はさらに進んで、秦こそが「郡」を創設したと述べ、その創設の契機は、秦に特有の領域拡大にあったことを論証する。
 本論文の意義は第一に、出土資料と文献史料、双方を用いた研究の重要性を示したことである。近年、多くの研究者が出土資料を利用するようになったが、その成果を文献史料と組み合わせ、活用した研究は現実には多くない。本論文は双方からデータを得られる「郡」に着目したことで、両者の効果的な利用に成功している。
 第二に、地域差とともに「広さ」に意識を向けたことである。秦は当初、関中と呼ばれる東西300km程度のやや扁平な領域を有していたが、前328年ごろ魏から獲得した領土に最初の「郡」を設置、この時点で領域はおよそ二倍になる。以後も同規模の拡大を繰り返し、前221年の天下統一に至る。筆者によれば、こうした急速で大規模な領域拡大は秦に特有であり、ここに県より上級の「郡」という単位を設置する契機があった。逆に言えば、その他諸国は秦に領土を奪われるばかりで、そもそも「郡」を置く契機に欠けていたのである。「郡」の有無という地域差を、領域拡大の有無から解釈してみせた点に本論文の創意があると言えよう。


◇ 主な著作・論文等
・「春秋時代の領域支配—邑の支配をめぐって—」
  (『東洋史研究』第65巻第4号、2007年)
・「先秦期における郡の形成とその契機」
  (『古代文化』第61巻第4号、2010年)
・『先秦時代の領域支配』
  (プリミエ・コレクション)(京都大学学術出版会、2011年6月)。

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