『角田文衞の古代学』

『角田文衞の古代学4 角田文衞自叙伝』



出版年月日:2017/10/31
ISBN:9784-642-07899-3
判型:A5
ページ数:406ページ
定価:本体5,000円+税
販売:吉川弘文館

 第一部 角田文衞の生涯
  自叙伝
  角田文衞 年譜
  古代学協会の沿革
  角田史学の構想
 第二部 理想の研究機関の構想
  『古代学』創刊の辞
  財団法人古代学協会 設立の趣旨と沿革
  勧学院大学設立趣意書
  平安博物館設立趣意書
 第三部 初期論文
  伊達の読方の史的一考察
  郷土史前学の研究に就いて ―地歴館の落成に際して―
  近代における女性憎悪の潮流
  メガロン
  〔解題〕角田文衞の軌跡 山田邦和

 生前、角田は自ら早熟の学者と呼んでいた。また『京の朝晴れ』になぞらえてもいた。すなわち、朝は気持ちよく晴れていたのに、徐々に雲行きが怪しくなり、やがては悪天候に見舞われる。波瀾万丈の人生を歩んできた角田の一生を表すにふさわしい。
 本巻は、その生涯を垣間見ることができる構成となっている。 第1部は『自叙伝』、『角田文衞 年譜』、『古代学協会の沿革』、『角田史学の構想』。
 これまでも角田の人生を回顧したものは刊行されている。『京の朝晴れ』、『京の夕映え』、『薄暮の京』の三作であるがいずれも短文である。本巻は、角田の生涯の全体像を知ることができる貴重な内容となっている。
 まずは第1部「角田文衞の生涯」。このなかには角田自身が口述筆記を続けた『自叙伝』。特に戦中戦後、シベリア抑留の体験の箇所は自身の思い入れを感じることができる。また角田が詳細に書きためたノートをまとめた『年譜』や、自らの半生をかけた古代学協会の歩みを記した『古代学協会の沿革』。そして角田自身が自分の学問の全容を余す所なく語った『角田史学の構想』。この論文には責任編集者である山田邦和氏による文献註が付けられ、角田の業績を知る上で大いに便がはかられている。
 第2部「理想の研究機関の構想」は、若い角田が海外の研究雑誌にもひけをとらない水準をめざした学術雑誌「『古代学』の創刊の辞」。また古代学協会設立の志をのべた「財団法人古代学協会 設立の趣旨と沿革」。日本ではじめての研究博物館開館における高い理想とその実現をめざした「平安博物館設立趣意書」。そして古参の職員でさえもその計画の存在は聞いたことがあっても実見したことのなかった「勧学院大学設立趣意書」。計画の壮大さと実現まであと一歩というところで挫折した角田の無念を知ることができる。
 また第3部には「早熟の学者」かくありきと我々に示す「初期論文」4本が収録されている。文学青年を彷彿とさせる自由な筆の運びに、後年、研究者のみならず多くの一般の読者を魅了し歴史の世界にいざなった角田の文章の巧さの芽生えを感じることができる。

 角田の実行力の源は研究に対する大いなる理想である。その理想を自問自答することによって数々の業績を積み上げた。また挫折を踏み越え、自らを奮い立たせ前進しつづけた。そして95年の研究人生を全うしたといってよいであろう。いや「まだまだやりたいことが山のようにある」との声が聞こえてきそうであるが。 このような研究者がいたことを本書によって知っていただけたなら幸いである。

 今回の『角田文衞の古代学』全4巻の編集にあたって、先に述べた山田邦和氏(同志社女子大学教授)並びに吉川真司氏(京都大学教授)に責任編集の労をおかけしている。このお二人のご尽力がなければ到底進められない編集事業である。まだ長い道のりではあるが、ここに心から感謝の意を表したい。

(山ア 千春)

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