公益財団法人古代学協会

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◇ 経  歴

氏  名:本庄 総子(ほんじょう ふさこ)
生  年:1982年(京都府八幡市生) 京都市在住
学  歴:2005年 京都大学文学部卒業
     2013年  同 大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学
     2016年  同 博士(文学)取得
現  在:日本学術振興会特別研究員(奈良女子大学)


◇ 受賞論文

「奈良時代の解由と交替訴訟」
(第68巻第2号、2016年9月)


◇ 受賞理由

 律令国家は、地方行政単位である国の行政官として、中央から国司を派遣した。国司交替の際の交替手続きが解由で、事務引き継ぎ文書が解由状である。桓武期に解由状を監査する令外官として勘解由使を設置されることは、当該期の地方行政改革に関する重要事項として、高校の日本史教科書にも取り上げられる。
 しかし、従来、桓武期以前の解由制度に関しては専論はなく、桓武期以後との対比で、漠然と未熟性が強調されるばかりであった。本論文は、かかる研究状況の克服を目指したものである。
 著者は、まず、奈良時代の解由は、解由未取得者に上日を認めず考選から排除する制度だった、と主張し、天平一七年の公廨設定の意義を再検討する。さらに、天平宝字二年の明法曹司論定を読解し、交替訴訟の多発を、交替制度の機能不全ではなく、官物填納強化を示す現象として捉え直した。
本論文の特徴は、難解な法制史料を精密かつ着実に読み解き、新たな史実を発見した点にある。筆者は、学位論文「日本古代における律令行政の研究」で京都大学文学研究科から課程博士号を授与されている。また既発表論文には、本論文で取り扱った地方行財政制度の他に、律令籍帳制、『令集解』に関する成果があり、いずれも精度の高い実証研究として、既に高い評価を得ている。
 律令制度史研究、特に地方行財政研究は、重厚な研究史を有する。「角田文衞古代学奨励賞」の受賞を契機に、先行研究の高い壁を乗り越え、著者が研究を益々発展させすことを期待するものである。


◇ 主な著作・論文等

・「税帳と税帳使―大租数文と官稲混合を中心に―」(『日本研究』51巻、2015年3月)
・「大宝二年戸籍と寄口―造籍原理とその転換―」(『史林』98 巻6 号、2015年11月)
・「律令国家と「天平の転換」―出挙制の展開を中心に―」(『日本史研究』655号、2017年3月)