講師紹介と講座内容

講座名:神殿でみる古代アンデス文明
講師名:関 雄二(せき ゆうじ) (国立民族学博物館館長)
※新規講座
◆講師自己紹介 1956年東京生まれ。国立民族学博物館館長・名誉教授。専攻はアンデス考古学、文化人類学。 50年近く、南米ペルー北高地において神殿の発掘調査を行い、アンデス文明の成立と変容を追究するかたわら、文化遺産の保全と開発の問題にも取り組む。 主な著書として『古代アンデス 権力の考古学』(京都大学学術出版会 2006)、『アンデスの文化遺産を活かす-考古学者と盗掘者の対話』(臨川書店2014)、『アンデスの考古学 新版』(同成社2021)などがある。2008年濱田青陵賞、2015年ペルー文化功労者、2016年外務大臣表彰、2020年文化庁長官表彰、2023年ペルー大功労勲章を受賞。
◆講座の内容紹介・受講される皆様へ 古代アンデス文明と聞けば、誰しも思い浮かべるのがマチュ・ピチュやインカ帝国であろう。しかし、インカ帝国が栄えたのは、我が国の歴史でいえば戦国時代にあたる。アンデス地域では、それをさかのぼること4000年もの古代文明の流れがある。なかでも、文明初期の時代はアンデス考古学上「形成期」(前3000年~前50年)と呼ばれ、巨大な神殿における活動を中核に社会が統合されていたことがわかっている。この時代を70年ちかくにわたって調査してきた日本調査団の成果や近年の発見などを交え、神殿の果たした役割を考え、他の古代文明には見られない古代アンデス文明の特徴に迫る。また、その神殿を、現在遺跡周辺で暮らす住民と保存し、活用する方法を探る。
◆講座スケジュール
月1回 5回講座 土曜日 15:00~16:30 ※11・12月は日程変則、1月は休講月
第1回 10月24日(土)
内容: 狩猟採集から農耕・漁労定住へ
1万年前、氷河が後退すると、それまで生息していた大型哺乳類が絶滅し、冷涼で乾燥していた気候も今日のように温暖多雨の環境に変化する。新たな環境に適応を開始した人々は、野生の植物を栽培化し、また豊かな海洋資源の利用を開始する。数千年間の実験段階を経て、前3 0 0 0年頃から公共建造物、いわゆる神殿の建設を始める。こうした自然環境、そして人々の生業の変化や神殿の建設開始の状況を紹介する。
第2回 11月25日(水)※講座日注意
内容: 神殿更新論
アンデス文明初期には、神殿が建設されては、定期的に更新された。1 9 6 0年代に、この事実を世界に先駆けてつかんだのは、日本の調査団であった。ペルー中部高地に位置するコトシュ遺跡は、現地の教科書にも取り上げられる重要な遺跡であり、このデータをもとに、日本調査団は、神殿の更新こそ社会変化をもたらした原動力とする画期的な学説を提示した。この説を紹介するとともに、旧来の文明観を覆すことの意味を考えて見たい。
第3回 12月11日(金) ※講座日注意
内容: 神殿の拡大と権力の生成
近年、神殿建設が始まって20 0 0年後に、人々を統率するリーダーが誕生したことがわかってきた。その先駆けとなったのが、やはり日本調査団であり、豊かな金製品を伴う埋葬を数多く発見し、学界に衝撃を与えてきた。こうした発見を紹介しながら、リーダーが神殿においてどのような活動を行い、また権力を掌握していったのかを考察していく。
第4回 2月27日(土)
内容:神殿社会の終焉
西暦紀元前後、アンデスでは神殿での活動を中心として統合されてきた社会が終焉を迎える。動植物を組み合わせた複雑な図像は姿を消し、城塞型の建造物が山上に築かれるなど、地域間の闘争や戦争が繰り広げられた可能性も指摘されている。この状況を紹介するとともに、やがて登場する国家社会と形成期社会との違いをみる。
第5回 3月27日(土)
内容:地域住民とともに守り、活用する文化遺産
多くの問題をかかえるアンデス文明の遺跡において、日本の調査団は過去3 0年以上にわたり、遺跡周辺で暮らす人々ともに出土遺物・遺構を守り、活用するプロジェクトを実施してきた。とくに、アメリカ大陸最古級の金製品を副葬した墓の発見においては、国、州、郡、村との利害対立を調整し、博物館の建設にまで至った。現在も続く、文化遺産の保存と活用における葛藤を紹介し、研究者がどのような立場をとるべきか論じる。
