公益財団法人古代学協会

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講師紹介と講座内容

講座名:藤原道長時代の仏師と仏像

講師名:根立 研介 (ねだち けんすけ)(公益財団法人美術院 理事長、京都大学名誉教授)

※新規講座

◆講師自己紹介

専門は、日本美術史、特に日本彫刻史。文化庁文化財調査官等も経験し、日本全国各地の仏像などの彫像を調査する。著書に『日本中世の仏師と社会』(塙書房)、『日本中世肖像彫刻史研究』(中央公論美術出版)、『運慶』(ミネルヴァ書房)、『仏を造った人びと』(吉川弘文館)などがある。また、『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代造像銘記篇』の編纂にもかかわり、日本彫刻史の基礎資料集の刊行にも尽力をしている。

◆講座の内容紹介・受講される皆様へ

摂関政治の絶頂期である藤原道長の時代(10世紀末から11世紀第一四半期頃)は、いわゆる国風文化の花開いた時代で、仏像制作の分野では和様(わよう)と言われる穏やかな顔立ちと均整の取れた美しい像容の仏像様式が大成された時代である。この時期に登場するのが、前代までの仏師とは異なり、僧籍を有しながらも大規模な私工房を構える仏師たちで、その代表は康尚(こうじょう)と定朝(じょうちょう)である。彼らは、道長やその子息頼通、宮中の造仏に携わり、出来映えの優れた仏像を数多く制作していった。この講座では、彼らの事績と遺品を追いながら、道長時代とそれに続く子息頼通時代の仏像がどのようなものであり、定朝によって大成された和様がいかなるものであったかを語っていきたい。




◆講座スケジュール

5回講座 水曜日 15:00~16:30 ※8月は休講月です。

第1回 4月3日(水)
内容:康尚の事績:従来には無かった新しい性格を有する康尚は、藤原道長関連の仏像を数多く造り、仏師の世界に君臨した。彼の仏師としての事績が如何なるものであったかを話していきたい。

第2回 5月15日(水)※講座日注意。法金剛院の現地見学。
内容:和様彫刻の現地見学:摂関期、定朝が大成した和様彫刻は、定朝没後、仏像制作の規範となる。こうした規範に基づいて造られた仏像を定朝様(じょうちょうよう)と呼ばれるが、院政期を中心に数多く造られた。その定朝様の代表作が、右京区花園の法金剛院に伝えられる国宝阿弥陀如来像(1130年、院覚作)である。この国宝仏を実際に見て、和様彫刻がどのようなものであったかを理解してもらいたい。

第3回 6月5日(水)
内容:同聚院不動明王像と康尚活躍期の仏像遺品:康尚作の可能性が極めて高い東福寺塔頭同聚院不動明王像(もと法性寺五大堂五大明王像中尊像)と、真正極楽寺(真如堂)阿弥陀如来像や平等寺(因幡堂)薬師如来像などの同時期の遺品を画像で見ながら紹介し、和様が大成される直前の時期の仏像の様相を見ていきたい。

第4回 7月3日(水)
内容:定朝の事績:康尚の弟子とも子息と見られる定朝は、道長関連の仏像や宮中関連の仏像、さらには道長の子息頼通関連の仏像を数多く手がけた当代の代表的な仏師である。彼は、和様や寄木造りの技法を大成した人物と目され、後世には仏師の祖と仰がれている。ここでは、彼が仏師としてどのような活躍をしたのかを追っていきたい。

第5回 9月4日(水)
内容:平等院鳳凰堂阿弥陀如来像:平等院鳳凰堂阿弥陀如来像は、定朝の唯一確実な遺品である。定朝最晩年の作であるが、この作品を通して彫刻の和様の大成した姿を見ることが出来るので、ここではこの阿弥陀如来像を詳しく述べてみたい。