公益財団法人古代学協会

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◇ 経  歴

氏 名 : 越川 真人(こしかわ まこと)
生 年 : 1989年7月26日
出生地 : 東京都
学 歴 : 明治大学文学部史学地理学科卒業
明治大学文学研究科博士前期課程修了
明治大学文学研究科博士後期課程満期退学
東京大学史料編纂所学術専門職員(古代史料部)
現 在 : 東京大学史料編纂所 古代史料部門 学術専門職員


◇ 受賞論文

『古代文化』第76巻第2号、2024年9月「平安時代中・後期の牛飼童と貴族社会」


◇ 受賞理由

前近代の列島社会において、牛は馬とともに、生産と儀礼をつなぎ、権力の表象として機能した。近年の平安時代研究では、特に牛車に関する研究が盛んで、文献史学・考古学・国文学など各方面から追究が進んでいる。本論文は、それらを踏まえ、牛を管理し牛車を運転する牛飼童に着目し、社会集団・組織における彼らの存在形態を解明し、そこからうかがえる古代・中世移行期の社会の特質を論じたものである。
著者は、まず貴族従者たる牛飼童の実態を牛屋の構造などとあわせて考察し、京近郊での居住と移動、交通業への従事により、同業者内部のネットワークが形成されたことを指摘する。さらに、院政期の牛飼童について、年中行事的な儀式の構成員となったこと、「牛道」という文化的カテゴリーで職掌がされたこと、父子相伝による技能・知識の継承によって家業として確立したことなどを解明する。著者は、牛飼童身分の確立を、彼らを都市経済と儀礼秩序を媒介する主体として再定位し、牛と人・制度との連関の持続的再生産をもたらしたものとして評価している。
以上のように本論文は平安時代中後期の史料を網羅的に集成・整理し、当該期の牛飼童の歴史的性格を実証的かつ論理的に追究したものである。
平安時代史研究は、1990年代以降、政治・制度史分野を中心に目覚ましい進展を遂げ、
平安貴族社会から中世公家社会への移行についても実態解明が進んでいる。しかし、かつて花形だった社会経済史と連関する分野は低調で、例えば座の成立過程など、重要な研究課題が未解明のまま残されている。著者の研究は、個別身分の実態解明にとどまらない有意義なものといえる。「角田文衞古代学奨励賞」の受賞を契機に、著者が研究者としてさらなる飛躍を遂げることを期待する。


◇ 主な著作・論文等

・「院政期貴族社会と天皇の身体-「御物忌」慣行と天皇御前儀の形成-」『駿台史学』156号、
2016年。
・「平安時代中・後期における大規模造営事業の展開-国家財政史研究の現状と課題-」科学研
究費補助金基盤研究(C)研究成果報告書『摂関期の瓦陶兼業窯をめぐる多面的研究』髙橋照  彦研究代表(課題番号 16K03155)、大阪大学大学院文学研究科考古学研究室、2020年。