(公財)古代学協会は、2011年、創立60周年の記念の年を迎えるにあたり、当協会の創立者・角田文衞博士の名を冠して、角田文衞古代学奨励賞を創設いたしました。
本賞は、季刊『古代文化』への投稿論文の中から秀作を選んで表彰し、古代史研究の奨励と将来性ある若手研究者を支援することを意図する論文賞です。本日はその第5回目の授賞式となります。
2011年は、当協会の再出発・創立60周年の機に臨む第1回目の特例として、2名を選出いたしました。第2回目の一昨年以降は、先立つ2カ年の掲載原稿の中から、秀作を選んで毎回1名を表彰することにいたしました。
今回、第5回目の選考にあたっては、本年5月までに、『古代文化』編集委員・編集参与・編集協力委員等63名の委員から推薦を受けた論攷・研究ノートを対象として、編集委員・編集参与を構成員とする選考委員会(6月19日)での審議を経て選考されました。
その結果、関根章義氏の「古代陸奥国における陶硯の受容と展開―城柵官衙遺跡を中心として―」(『古代文化』第66巻第3号、2014年12月)が、受賞論文・受賞者に決まりました。本研究は、古代陸奥国の城柵遺跡・官衙遺跡から出土した陶製の硯の分析にもとづき、この遺物の受容の様相が律令国家の支配領域の拡大過程を解明しています。これは、考古学の成果を歴史学へと止揚させた重要な研究であると評価でき、今後の研究の進展が期待されます。
ここに将来性を予感させる秀作を選考することができましたことは、主催者として喜びに堪えません。これが受賞者の今後の研究の進展に、いささかなりとも寄与することを願うものです。
今後もひきつづき、関係各位のご理解とご支援をお願い申し上げる次第です。

平成27年10月3日
公益財団法人 古代学協会
理事長 大坪孝雄