公益財団法人古代学協会

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◇ 経  歴

氏 名:東村 純子(ひがしむら じゅんこ)
生 年:1977年(京都市生)兵庫県西宮市在住
学 歴:1997年京都府立大学文学部史学科入学
    2006年京都大学大学院文学研究科博士後期課程 学修退学
    2009年 京都大学博士(文学)取得
職 業:2011年 日本学術振興会特別研究員(国立民族学博物館)


◇ 受賞論文

輪状式原始機の研究(第60巻第1号 2008年6月)


◇ 受賞理由

弥生時代の布や衣服は、遺跡からの出土例がきわめて少ないため、詳しくはわかっていない。それを補う上で、機織(はたおり)技術の復元は、重要な課題である。
著者は、従来から直状式(ちょくじょうしき)の原始機に復元されていた木製品について、考古学の視点から分析し、出土状況の確認や民族資料との比較、復元実験を行い、輪状式(りんじょうしき)の原始機を構成するものであることを論証した。
輪状式原始機は、輪状にそろえた経糸(たていと)を、布送具(ぬのおくりぐ)に挟み、反対側にある経送具(たておくりぐ)を足で突っ張って、布に織り上げる。織ることのできる布の幅は織手の腰の幅に、布の長さは織手の足の長さに規制される。
アジア南方の民族例には、輪状式の腰機(こしばた)が現存しており、とくに麻などの植物性繊維に適合する技術であることも重要な視点である。
さらに、弥生時代初めから古墳時代終わりまで、輪状式原始機が、連綿と改良を加えながら発展したことも、出土遺物に即して明らかにした。律令国家の成立による織機と布の規格、織手の変化など、後の時代にも繋がる問題も含んでいる。
著者は古代の紡織にかかわる体系的な研究を進めており、2011年3月に単著『考古学からみた古代日本の紡織』を六一書房から出版している。この分野の研究を体系的に発展させる研究者として期待でき、若手古代史研究者の支援を行う本賞の主旨にふさわしいといえる。アジア各国を中心とする海外の研究者とも積極的に交流していると聞いており、今後の活躍が大いに期待される。


◇ 主な著作・論文等

・『考古学からみた古代日本の紡織』(六一書房、2011年3月)
・「織物と紡織」
(上原真人他編『列島の古代史 ひと・もの・こと5 専門技能と技術』、岩波書店、2006年2月)
・「律令国家形成期における鉄製紡錘車の導入と紡織体制 」
(『洛北史学』7、2005年)
・「古代日本の紡織体制―桛・綛かけ・糸枠の分析から」
(『史林』87-5、2004年)