公益財団法人古代学協会は、2011年、創立60周年を迎えるにあたり、当協会の創立者・角田文衞博士の名を冠して、角田文衞古代学奨励賞を創設いたしました。
 本賞は、季刊 『古代文化』 への投稿論文の中から秀作を選んで表彰し、古代史研究の奨励と将来性ある若手研究者を支援することを意図する論文賞です。今回はその第10回目の節目であり、また当協会創立70周年にあたる記念すべき年の受賞となります。
 今回の選考にあたっては、本年6月までに『古代文化』編集委員・編集参与の委員から推薦を受けた論攷・研究ノートを対象として、編集委員・編集参与を構成員とする選考委員会(6月18日)での審議を経て選考されました。 
 その結果、鶴来航介氏の「泥除の系列」(『古代文化』第71巻第4号、2020年3月)が選ばれました。
 本論文は、弥生時代の考古学研究でややもすると等閑視されがちな木器に焦点を定めたものであり、その中でも鍬の付属具である泥除についてのきわめて精緻な研究です。著者はこの分析を通じて、弥生時代の高度化した技術体系を明確にするとともに、その時代の農業労働の本質に迫ることに成功しています。この研究は、弥生社会の仕組みを考える方法論に新たな頁を付け加えたものとして、高く評価したいと考えております。
 ここに将来性を予感させる秀作を選考することができましたことは、主催者として喜びに堪えません。本賞が鶴来氏の今後の研究の進展に、いささかなりとも寄与することを願うものです。
 今後もひきつづき、関係各位のご理解とご支援をお願い申し上げる次第です。

2021年10月30日
公益財団法人 古代学協会
理事長 朧谷 壽